とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~






その日街に向かう馬車の上で『来そうだな…』とユーリが呟いた。



隣で大きな欠伸をしていた右京は『あ?』と間抜けな返事をする。



『ほら向こうの空が真っ黒だろ?あの感じじゃ今日は荒れるかもしれない。』



『スコールならよくあるじゃないか。
別に珍しい事じゃない。』



『ただのスコールならいいけどな…』



何となくその空がいつもと違う気がしてユーリは少し馬を急がせる。



『そういえば近頃強盗が増えてるらしいな!』



『ああ、この前酒場でもその話が出たな…』



『ターゲットは観光客らしいからうちらは多分大丈夫だと思うけど…』



『むしろ来ればいいのにな?逆に返り討ちにしてやるのに…』



平然とそう言う右京にユーリは腹を抱えて笑った。



街に到着すると同時に降り出した雨のせいで荷物の積み込みが出来ず、酒場に入って雨宿りをする事にした。



『よぉ、ユーリとウキョウじゃねぇか!ついてないな!』



白い歯を見せて笑う酒場の主人に『まったくだ』と答えて二人はカウンターに座った。



ちょくちょく店に来るユーリと右京はすっかりこの店の常連になっていた。


店の主人も気さくないい人で、今じゃ右京の事も村の人間だと思っているようだった。



< 60 / 461 >

この作品をシェア

pagetop