とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『そういえばさっきガイドの仕事をしてくれる人を探してるってデナリーの観光局から連絡が来たんだが…お前達どっちかやらないか?』
『また観光客か…この前も居たよな?カメラマンが…』
『あのチンチョンか…』
明らかにアジア系人種を蔑視した店の主人の言い方に右京は眉を寄せた。
『そういう言い方は良くない。』
右京の鋭い眼差しに睨まれた主人は『そうだな』と少し怯みながら頷いた。
『いいよ、俺が引き受けるよ。』
『ユーリは仕事があるじゃないか…』
『ずっと俺の仕事手伝ってんだからお前が代わりにやればいいだろ?』
ユーリはニヤリッと笑って右京の肩を叩いた。
まぁ、臨時収入になればユーリも助かるだろう。
だが、もし強盗に襲われたりしたら彼一人で大丈夫だろうか?
『俺が行ってもいいんだけど、そこまで土地に詳しくないからな…』
『じゃあ、積み込みが終わったら合流すればいい。それなら問題ないだろ?』
ユーリにそう言われ右京は渋々頷いた。
『客が来たらこの店で待たせておくから後で寄ってくれ。』
ユーリは『OK!』と言うと立ち上がった。
どうやらスコールはもう通り過ぎたらしい。
二人は主人に軽く手を上げると湿度の高い蒸し蒸しとした空気の中へと出ていった。