とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バージはデナリーの市街地に続く道の方へ向かっていた。
先程まで降っていたスコールのせいで道がぬかるみ走りづらい。
右京は思わず舌打ちをした。
バージに急かされ少し焦る。
─もっと早く…!
そう思った時、突然辺りの風向きが追い風に変わった。
ぐんぐん速度を上げてバージを追う。
ふと前方の道の先に人影が見えた。
…あれは…
見覚えのある座り込んだアジア系の男…
『おい!大丈夫か!?』
右京が駆け寄ると、男は呻きながら辛そうに頭を抱えた。
『き…君は…この前の…?』
『ああ、右京だよ。…何があった?』
『突然襲われ…!?…ない…カメラがない!…バックも…』
このカメラマンはどうやら強盗に襲われたらしい。
バージはそれを教える為に…?
上を見上げるとバージはまだ旋回して“早く!”と右京を急かす。
…この男じゃないのか?
『…あんたを襲ったヤツってどっちに行った?』
『解らない…。でも“カモが来た”って…。多分、僕がバックの中に現金を入れて無かったからだろうな…』
そう言って男は服を捲るとシャツにテープで張り付けたパスポートと財布を見せた。