とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




ジュンはゆっくり右京に歩み寄るとコーディを抱き渡した。



「ありがとう…良かった…」



「ちっとも良くありませんよ!突然消えたと思ったら、こんな僻地に…!」




怒り出したジュンに右京はちょっと圧倒されながら「ごめん」と謝る。




「…って今の右京様に言っても仕方ないですね…」



溜め息混じりにそう言ってジュンは微笑む。



「ワタクシは忍様の元に帰ります。」



「…シノブ…?」




首を傾げた右京にジュン訝しげな表情をした。



「…まさか…忍様を憶えてない…と?」



「教えてくれ!シノブって誰なんだ!?」



「…お 断 り し ま す。
…ワタクシは思い出したのに忍様を思い出せないとか…“最悪”ですね…」




半眼で右京を睨むと更に深い溜め息をつく。



「右京様が忍様を思い出すまでワタクシは黙っておきますので、“早急に”記憶を取り戻してください。」




ジュンは右京の眉間に人差し指を突き付けてそう言うと睨んだ。



そして困惑する右京を見て楽しそうに笑うと、背を向けて歩き出した。



「待ってくれ!何でお前が戻る!?お前は…俺の配下なんだろ!?」




ピタリと動きを止めたジュンは振り返って右京を鋭い眼差しで見つめる。



「ワタクシに忍様と居るように命じたのは“あなた”ですよ。」



そう言い残してジュンは姿を消した。



右京はただ呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。




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