とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
バージの声で我に返ると右京は彼女を見上げた。
『バージ…何故コーディはここに?』
─村外れの川辺で友達と遊んで居るのが見えました…
スコールが降った直後でバージが心配していた矢先の出来事だった。
コーディは川の流れに足を取られた友達を庇って流されたらしいとバージは語った。
『人間の事はあまり好きではないと思っていたが…?』
─…コーディは…いい子です…
顔を背けたまま言うバージに右京は一瞬呆気にとられた顔をしたかと思うと笑い出した。
『ククク…そうだよな、コーディはいい子だ…』
そう言いながら来た道を戻る。
だがいつまで笑い続ける右京にバージちょっと気分を害したらしい。
─何がそんなに可笑しいんです!?
わ…私は真面目に答えただけですよ!?
『あはは…判ってるって!ありがとうバージ。』
そう言うとバージ一声鳴いて空高く舞い上がって行った。
右京はその姿を見送ると、先程のジュンの言った事を思い出す。
…俺はアイツに“シノブ”と居る様に命じたのか…
何故俺はそう命じたんだ?
そもそも“シノブ”とは誰だ…?