とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
その日の夜から再び天気は崩れ、正に嵐の様だった。
『…すっ…凄いカミナリ…』
『ねーちゃん、怖いの?』
『さすがにちょっと怖いかも…』
『…な~に女みたいな事言ってんだか…』
『私は女だ!バカ兄貴!』
三人のやり取りを見て右京クスッと笑った。
『ほら、右京も笑ってるぞ?』
『俺は何も言ってないぜ?
…ミーシャが女だって忘れてたなんて言ってないし…』
『なっ…ウキョウまで、ひどい!』
いつも明るい兄弟達に右京は感謝した。
特に今日は独りでいたら色々悩んでしまいそうだった。
時折昼間ジュンに言われた言葉を思い出して焦っている自分がいるのだ。
右京の心の中には真っ黒な渦がある。
不鮮明でその渦の先はボヤけてはっきり見えない。
いっそその渦も嵐みたいなもので、待ってればその先が鮮明になればいいのにとさえ思う。
ジュンやバージは明らかに自分よりも右京の事を知っている。
教えてもらえない事よりも、思い出せない自分に腹が立った。
外の嵐の音と、そんなモヤモヤした気持ちとで右京はなかなか寝付く事が出来なかった。
…“シノブ”…
その人物に会えばその気持ちも晴れるのかな…