とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
忍の部屋に入るとニコールはソファの背に腰掛けて微笑んだ。
『君が怖くて寝れないんじゃないかと思ってね。』
『…とか言って、からかいに来たんじゃないんですか?』
そう言うとニコールは『バレたか』と笑った。
『って言うのは冗談!…本当に心配で来たんだよ。』
珍しく優しい顔でそう言うとニコールは忍の頭を撫でた。
…ニコール…?
何となく違和感を感じて硬直してしまった忍を見て彼は困った様に笑った。
『…そんなに警戒されると傷付く…』
『あ…すみません…右京以外に触れるの…慣れてないんで…』
『…こんな時アイツなら君を抱き締めるんだろうな…羨ましいよ。』
『…ニコール…?』
いつもと違うニコールに首を傾げる。
ニコールは『なんでもない』と溜め息をつくと立ち上がった。
『シノブが大丈夫なら良かったよ。』
そう言って入口へ向かう途中でふと足を止めた。
突然振り返ったニコールに忍は驚いて彼を見上げた。
それは一瞬の出来事だった。
ニコールは忍をフワリと抱き締め耳元で囁いた。
『…俺が傍に居るから…』
そしてすぐに忍から離れると『おやすみ』と言って出ていった。