とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『観光局に電話して、向こうの連絡先を聞いた。』
『電話したんですか?』
『ああ。丁度ガイドをしてくれる人が居てね。馬車で良ければ迎えに来てくれるそうだ!』
ニコールの言葉に忍はパァッと表情を明るくした。
『でも、タクシーは通れないのに馬車は大丈夫なんですかね…』
『馬車しか通れない道があるらしい。』
『…なんか…嫌な予感がしますね…』
『え?そうかい?』
この楽天家には“不安”という言葉は存在しないのかもしれない。
『迎えに来てくれるんなら、その好意に甘えようじゃないか!』
『…本当に大丈夫なんでしょうね?』
忍はそう言ってニコールに冷たい視線を向けるのだった。
チェックアウトを済ませた二人はガイドを待った。
しばらくして現れたのはインディオ特有の浅黒い肌をした青年だった。
愛嬌のある笑顔に忍は少し癒された気がした。
『お待たせしました。ガイド役のユーリです。』
『急な話ですまないね…俺はニコラス。彼女は護衛…じゃない…助手のシノブだ。』
『助手のシノブです。…護衛じゃないです。』
ニコールをギロリと睨むとオーバーなくらい肩をすくめて『冗談じゃないか』と呟いた。
『ははは!可愛らしい護衛だね。』
ユーリにそう言われて忍は『助手ですッ!』と恥ずかしそうに否定する。