とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
つり橋の幅は馬車がギリギリ通れるくらい…
脱輪したら間違いなく川に投げ出されるだろう。
ちょっとした溝でさえ揺れが半端なく凄い。
思わず隣で手綱を握るユーリにしがみついた。
『こりゃ得しちゃたかな?』
ケラケラと笑うユーリに反応出来る余裕がない。
「ダメダメダメ!ホントにもうダメ~!助けて、右京~!」
思わず日本語でそう口走る。
『…今なんて…?』
『怖いって言ってんのよ!』
ユーリの驚いた声に怒鳴るように答える忍。
『じゃなくて…聞き違いか…?』
なんとかつり橋を渡り切ってニコールと忍はグッタリと項垂れた。
『だから大丈夫だって!』
『か…帰りは絶対タクシーで帰る!』
『さ…賛成…』
さすがのニコールも忍の意見に同意する。
『さぁ、後は山道を行くだけだよ。』
ユーリの言葉にホッとしたのも束の間、つり橋より細い道に忍はギョッとした。
一歩間違えば崖の下に真っ逆さまだ。
『ユ…ユーリ…?ここを通るの!?』
『そうだよ?』
『…他に道はないのかい?』
ニコールでさえいつもの楽天的な発言をしない。
『あるけど、早く着きたいだろ?…それに俺も人を待たせてるからね。』
そう言ってユーリはニッコリと微笑んだ。
『本当に大丈夫なんでしょうね~~~!?』
…忍は本日三度目の叫び声を上げた。