とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
確か観光客をターゲットにした強盗が増えているって話だ。
って事は…自分達が…?
ゴクリと息を飲んで辺りを見渡す。
『…奴らより先にアイツが来れればいいんだけど…』
ユーリがそう呟いた時、彼の馬が顔を上げてブルブルと鼻を鳴らした。
がさがさと茂みが揺れたかと思うと数人の覆面をした男達が馬車を取り囲んだ。
『な…ッ!?』
突然の出来事で呆気に取られ、忍は動けなかった事を悔いた。
『お前ら黙って有り金全部出しな!』
『二人とも。出す必要ない!』
ユーリは強盗を睨みながら忍を背後へと庇う。
『お前らみたいな姑息なヤツ…世の中で一番嫌いなんだ!』
そうユーリが言うと、強盗のひとりが彼をバットで思いっきり殴り付けた。
忍の悲鳴とニコールの叫び声が響き渡る。
…この人達…本気だ!
頭から血を流しているユーリを見て、忍は恐怖を感じた。
だが、ニコールにこの人達を相手にする事は出来ない。
やるなら私が…!
多分、女の私になら油断する!
「ニコール!貴方は黙って従って!私が…!」
ニコールは忍の危険賭けに首を振る。
「やめろ!無理だ!」
日本語でやり取りする二人を見て頭に血が上っている強盗は『騒ぐな!』とニコールをひっぱたいた。