とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
その時、辺りに風が吹き荒れ、木々がざわめいた…。
忍の腕を掴んでいた男が短い唸り声を上げた。
急に解放された忍はその場に崩れ落ちる。
忍の目の前には大きな背中が見えた。
そして…風に揺れる銀髪…
─声が出ない…!
『ずらかるぞ!』と言う言葉を聞き、強盗が退散したのが判った。
目の前の彼はゆっくり振り向いて忍の傍に座り込む。
『大丈夫か?』
間近にある捜し続けていた愛しい…彼…
忍は震える手を伸ばして右京の頬に触れた。
「…右京…!」
やっと出た忍の声に右京が驚いて目を見開く。
「…君は…誰?」
忍は頭を殴らた様な衝撃に意識を手放した…。
右京の胸に倒れて込む小さな身体を抱き留める。
…知ってる…
俺は…彼女を知ってる!
「君が…シノブ…?」
気を失った彼女の頬を撫でる。
懐かしく…愛しい…
自然と涙が溢れた。
知っていると感じるのに記憶は戻らない。
…背中が…痛い…。
『…クロウ…?本当に…クロウか!?』
そう言われ振り返った。
髭面のその男を見て右京は首を傾げる。
『…君も…俺の知り合い?』
その言葉にニコールも唖然として右京を見つめた。