とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
◇◇◇◇◇◇◇◇
忍はいつもの様に境界を歩いていた。
やっと右京の側まで辿り着いて大きな声で彼を呼ぶ。
「右京!!やっと…見つけた!」
手を伸ばすけど右京は忍を見て首を傾げた。
「君は誰だ?」
「何言ってんの!?私よ!忍よ?」
そう言っても右京は首を傾げるだけ。
「…知らない。…君を…知らない。」
イヤ…ウソよ!
ねぇ、嘘だと言ってよ!
「右京!!!!」
叫んで飛び起きる。
「…あのさ…そんなデカイ声で呼ばなくても聞こえるから。」
…えっ?
忍の枕元に座りながら右京がそう言うと忍は口をパクパクと動かした。
「な…な…な…」
「あ~何で俺がここに居るかって?君が俺を放さなかったからさ。」
そう言われて忍は自分が右京の服の裾をずっと掴んでいることに気付いた。
「あ…ごめん…」
「別にいいよ。…寝顔…可愛かった。」
「ばッ…バカじゃないの!?」
顔を真っ赤にして怒る忍を見て右京はクスッと笑った。
「ごめんな…憶えてなくて…」
「…夢じゃ…なかったんだ…」
寂しそうに俯く忍を右京は覗き込む。