とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「なぁ教えてよ…俺について。」
「…何から教えれば…?っていうか、何も憶えてないの?」
「んー…名前は思い出した。あと…ジュンも…でも家族は思い出せない…」
「えっ?…潤君を思い出したの!?」
「昨日ね。でも…なんか怒られた。」
だろうなぁ…
うん、潤君ならそうだろう…。
「あれは…?思い出した?」
「あれって?」
「ほら…背中の…」
「背中?…何?」
どうやら肝心な事を思い出してないらしい。
忍は溜め息をついて右京を見た。
「…ちょっと待って…あれ…?」
右京に顔を近付ける忍に「な…何!?」と少し後ずさる。
「動かないで。」
そう言って忍はそっと手を伸ばした。
そして右京の長い前髪を掻きあげた。
前髪に隠れていた深紅の右目を見て忍は唖然とした。
「…この目はいつから…?」
「えっ?…ずっと…」
右京の言葉に忍は少し考え込んだ。
「右京。服脱いで。」
「えっ!?…な…何する気!?…まさか…」
「ち…違うわよ!背中見せてって言ってんの!!」
何故か照れたように「なんだ…」と言って右京は上着を脱いだ。
忍は背中に出来た大きな傷を見て口元を手で覆った。