とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ポロポロと泣く忍に気付かない右京は背中を向けたまま話し出した。
「傷痕凄いだろ?なんで出来たかわかんねーんだよ。今はなんともないけど、時々痛む時があってさ…聞いてる?」
右京は全く返事をしない忍を不思議に思って振り返った。
「なッ!?…どうした!?」
ただ泣きながら首を横に振る忍を右京は心配そうに覗き込んだ。
「…どっか痛いのか?」
「ちが…違うの…」
「泣かないで、忍…」
「ごめん…ごめんね、右京…」
…守ってもらうばっかりで、私は右京に何もしてあげられなかった…!!
声をあげて泣く忍を右京はギュッと抱き締めた。
「…忍に泣かれるのは…辛い…上手く言えないけど…」
以前にも同じ事、言われたっけ…
忍は右京を見上げて微笑んだ。
「…大好きよ…右京。…生きてて良かった…」
右京は忍の言葉に愛しいさが増した。
同時に言い様のない気持ちが沸き上がる。
それは…そう、“嫉妬”だ。
右京は以前の…記憶がある頃の自分に嫉妬をした。
“俺”は忍に愛されていた。
それは…今の俺じゃない…
「…俺…早く忍の事を思い出したい…」
そう言って抱き締める腕に力を込めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇