とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『俺は記憶のないウキョウしか知らない。でもお前はいいヤツだってのには変わりないと思うよ?』
ユーリの言葉に右京は微笑んだ。
『そっか…じゃあ、力も使えないのか…』
『“力”って?』
ニコールの呟きに右京は首を傾げた。
『いや、こっちの話!』
皆何故か口が固く、多くを語ってくれない事に苛立ちを感じる。
『お前の事はお前がなんとかしろ!…でも俺の事なら話してやるよ。』
『…お前の事聞いても…』
『…なんだと?』
慌ててユーリが間に入る。
『こらこら!彼の話、聞こうじゃないか。何か思い出すかもしれないだろ?』
あまり興味は無かったがとりあえず彼の話を聞いてるみる。
彼はとある雑誌の記者で、忍は彼の担当者らしい。
『どんな記事書いてるんだ?』
『“オカルト系”だよ。』
オカルト…
『“チュパカブラ”とか?』
『いい線いってるね~!でも、俺が書くのは宗教絡みだ。』
“宗教”という単語が引っかかった。
右京の微妙な表情の変化に気付いたニコールは少し口角を上げた。
『宗教学はお前の専門分野のはずだぜ?』
『…そうだ…俺…イギリスの大学に居たんだ…』
『ああ、その通りだ。よく思い出せ。』
そう言うとニコールは大きな欠伸をした。
『今日は休む。ユーリ、明日よろしくな?』
そう言うと彼は席を立った。