とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『明日って?どっか行くのか?』
『ああ、本来の目的はウキョウの捜索だったらしいけど、この辺りの伝承にも興味あるっていうからさ。』
『記者って言ってたもんな…』
『それより!』とユーリはお約束の様にウキョウの隣に移動すると声を潜ませる。
『可愛いよな~…忍。』
『えっ?…ああ…可愛いよ…凄く。』
『なんだよ、さっきから!』
『いや…なんつーかさ…記憶がない事が不安になって来たんだ。』
『例えば?』
『彼女が好きな俺って、今の俺じゃないかも…とか…』
真顔でそう言う右京を見てユーリはプッと吹き出した。
『笑うなって!』
『すまん…つい…』
まだクスクスと笑いながらユーリはバシバシ右京の肩を叩く。
『焦らなくてもウキョウは思い出すよ。…まぁ、思い出さなくても問題ない気がするけど…』
『…他人事だと思って…』
右京が横目で睨むとユーリはニヤリッと笑った。
彼女と一緒にいる時間が増えれば少しずつでも記憶が甦るかもしれない。
明日また会いに来よう。
そう考えて『行くぞ』と立ち上がったユーリの後を追って右京も酒場を後にした。
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