とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
おばさんの見透かすような視線から逃れるように作業に没頭する。
『…ミーシャ…あんた好きな子が居るのかい?』
突然そう言われて手にしていたジャガイモをボトッと落とした。
コロコロと転がるジャガイモを追いかけるミーシャを見て、おばさんは豪快な笑い声を上げた。
『そうかい!そうかい!あんたも大人になったんだね~…』
『ち…違うわよ!』
『アタシを騙そうったって無駄だよ。』
確かにスーザンおばさんにだけは昔から嘘が通用しない。
兄弟や両親は騙せても、おばさんだけはミーシャの嘘を見破った。
小さい頃はおばさんが“魔女”なんじゃないかと疑った程だ。
『…なんで判るの?』
『さあね。アタシに似てるからじゃないかい?』
父親の姉にあたる彼女は両親が死んでから親代わりみたいなものだ。
自分がおばさんに似ていたとしても不思議ではない。
ミーシャは観念したようにハァと溜め息をついた。
『誰だい?相手の男は…』
『…片思いなの…』
『へぇ~!ケーシーかい?それともロビンかい?』
『違うわよ…ウキョウよ…』
おばさんは黙ってミーシャの話に耳を傾けた。