とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
忍の笑顔に自然と頬が緩む。
微笑み合う二人の脇を『あー暑い』と茶化す様にユーリの馬車が通り過ぎた。
顔を見合わせて二人は同時に吹き出す。
「今日は忍は俺と留守番だって?」
「うんうん。危ないらしいから右京と留守番!」
「さっき聞いてちょっとテンション上がった!どっか行く?」
「右京と一緒ならどこでも。」
そう言われて右京は自分の顔が火照った様に暑くなるのを感じた。
「忍に言われると照れる…」
慌てて顔を手で覆う右京を見て忍はクスッと笑った。
「忍には聞きたい事がいっぱいあるんだ。」
「なに?」
右京は答えようとして口を開きかけたがニコールの姿に気付いて「後でね」と言って彼らの方へ足を向けた。
『おはよう、クロウ!』
『おはよう、ニコラス。』
『違う、ニックだ。お前はそう呼んでた。』
『…ニック…』
確かに以前そんな知り合いが居たような気がする。
…他にも数名…“仲間”が…いなかったか…?
「どうかした?」
「いや…なんでもないよ。」
そう答えたが忍は心配そうに自分を見ているのがわかる。
右京はその視線から逃れるようにわざと忍に背を向けた。