とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
右京は忍が心配そうに見つめるその視線が苦手だった。
あの表情を見ると申し訳ない気持ちで胸が苦しくなる。
俺はいつもあんな表情をさせていたのだろうか…?
ユーリとニックを見送ってから忍に視線を戻すと彼女が微笑んでいてホッとした。
「ちょっとだけ積み荷の準備があるから、少し待っていてくれる?」
「ええ。じゃあ部屋に居るから、後で呼びに来て!」
そう言って戻りかけた忍がふと立ち止まった。
「あ…またあの鳥が…」
「ああ、バージだよ。俺の相棒みたいなもん。」
「バージ…?…もしかして…“バジリスク”?」
“バジリスク”…?
ああ…そうだ、彼女は“バジリスク”だ。
忍はそんな事まで知っているのかと右京は正直驚いた。
忍がバジリスクに手を振っている。
「ねぇ!彼女の声は聞こえる?」
「えっ!?…ああ、聞こえるよ。」
右京の返事に忍は「良かったぁ」と呟いた。
何が“良かった”のか…
宿へと戻って行く忍を見送って自分も仕事へと向かった。