とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
なんとなくバジリスクを羨ましくも思う。
が、先に“羨ましい”と言ったのはバジリスクだった。
─あの方を心から喜ばせる事が出来るのは、貴方だけですから…
「そうかな…なら、何故すぐに私を思い出してくれないのかしら…」
─理由があるのだと思います。
“理由”か…
いつか全てを思い出したら…聞いてみようかな。
忍は窓枠に持たれて景色を眺めながらそんな事を考えていた。
澄んだ空気が気持ち良くて目を閉じた。
─コンコン…!
扉をノックする音でハッと目を開けた。
少しだけ…と思ったつもりが一時間も寝てしまったらしい。
「どうぞ!」
扉に向かって声をかけるとゆっくり開いた隙間から右京が顔を出した。
「待たせた?」
「ううん、景色見てたら眠くなっちゃって…ウトウトしてた。」
忍がお茶をいれながらそう言うと右京がクスッと笑った。
「聞きたい事があるんでしょ?時間もあるし、何でも聞くわよ?」
「ああ…色々聞きたい。俺の事とか。でも一番聞きたいのは…忍の事かな…」
「私?…そうね…いいわ。私は“黒崎忍”22歳。」
「…クロサキ…」
「そう。戸籍上は貴方のいとこよ。」
「…ずっと一緒に…暮らしてた?」
「ええ。」
…そうだ、忍の両親が海外転勤になってからずっと一緒に暮らしてたんだ。