そばにいて
「さっさ帰れ。いつでもこれるだろう」
「…はい、わかりました。では、薫子さんの旦那さんと妹さんの名前を教えてください。調べてきますから」
薫子さんは、目を見開き僕の方から目をそらし奥の方に歩き始めた。
言わないつもりなのかと思い、呼び止めようとしたら薫子さんの声が静かに響いた。
「旦那は東雲龍之介、妹は東雲華だ。私の旧姓は桜宮だ。調べればすぐにでるだろう。久しぶりに外にでて疲れた。…身体を休めたいから当分ここには来るな」
薫子さんは、そのまま地下の奥に消えていってしまった。
僕はそのまま母さんからの怒りの電話があるまで、呆然とその場に立ち尽くしていた。