そばにいて
僕が住んでいる本家から離れは、そう離れてはいない。そして、僕は離れにつくと迷わずに戸を叩いた。
[ドンドン]
「…誰です?」
「龍之介さん、僕です。少し時間をください」
しばらくすると、重たい引き戸が静かに開いた。
「辰巳、久しぶりですね。中へどうぞ」
少し伸びた後ろ髪を1つに結び、優しい笑顔で左の目元の泣きボクロが印象的な【東雲龍之介】だ。
若い頃の姿が似てるといっても僕には、泣きボクロはないけどね。
離れの中は相変わらず、キレイに片付いていた。
「辰巳がここに来るのは久しぶりですね。なにか、悩み事でもあるんですか?」
のんびりとお茶の準備をしている龍之介さん。戸惑っても仕方ないから直球で聞こうと思った。