そばにいて
「ありがとうございました。また、地下に行って何か残ってないか調べてみます」
「待ってください」
僕は、一礼をして地下に行く準備や薫子さんの衣類を用意するために出掛けようと立ち上がると、龍之介さんに呼び止められた。
「私も行きます」
そう言った、龍之介さんの顔は真剣そのものだった。
無理もない。結婚する仲だったのに50年も離ればなれにされていたんだからな。
「はい。でも、少しそっとしてほしいと薫子さんに言われたので、地下に行くのは一週間後でいいですか?」
「勿論です」
龍之介さんは、力が抜けたように笑顔になった。よっぽど嬉しいんだろう。