狼は王子様!?
序章
私はお腹を空かせていた。
どのくらい歩いただろうか?
ここ3日ぐらい
何も食べていない気がする。
いや、さっきネズミを食べた。だが、腹の足しにならない。
「どこかに獲物がいないものかな。腹一杯になれば……」
そう思った時……
食欲をそそるような美味そうな匂いがした。これは人間か?
どうやら町か村があるらしい。あまり人を襲わないが。
私は人がいるその場所を見渡せる岩の上へ移動した。
いるいる。
どうやら村みたいだ。人は少ないが、腹の足しにはなるはず。私は岩の上から華麗に飛び降りた。私の姿を見て逃げ惑う人間がたくさんいた。
逃げればいい、私はお前たち人間の中から美味そうな奴だけを捕まえてやる。
「美麗! 危ないわ」
声の方に目をやると
何歳ぐらいだろうか。まだ小さい子供が近付いてくる。バカな奴だ。自ら餌になりに来たのだろう。私はその子供を見た。
「柔らかくて美味そうだな」
小さな子供は微笑んでいる。
そんなに食われるのが嬉しいのか? 人間とはよく分からない生き物だ。
「どこから食ってやろうか」
「美麗!!」
へへっ、恨むなら神を恨め!
襲いかかろうとした瞬間……。「狼さん、大丈夫だよ」
「……はっ?」
思わず立ち止まってしまった。何を言っているんだ?
「もう平気。みれが助けてあげるからね」
気付くと、私は頭を撫でられていた。この子供、一体何を?
「ねえママ、狼さんにご飯あげて。それとねんねするとこも」おいおい、正気か?!
狼を家に入れようとしてるぞ。でもまあ、悪くはない。
人間という飯が食えるかも知れないチャンスだしなあ。
「いけません!」
「どうして、可愛いのに!」
か、可愛い!?
一体何なんだよ。このガキは。「危ないからいらっしゃい!」「ヤダヤダ、狼さーん」
子供は母親に連れて行かれた。しかも泣き叫びながら……。
「ちっ、調子狂っちまう」
私は人間を諦めることにした。あのガキと会うことはない。
アバよ……人間。
機会があったらまた会おう。

私は森の中に入った。
後ろの方で痛々しい声が響いていた。私を呼ぶ少女の声が。
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