狼は王子様!?
第一章
大人の儀
村は平和だった。
10年前に狼が訪れた以外に
大きな事件は
何も起こらなかった。
10年前は5歳だった私も、
今となっては15歳!
そこそこ女らしくなった。
村の昔からの伝統とかで、今日はお祭りがある。
15歳の私と、私を含めた他の同じ年齢の人が対象らしい。
大人の儀っていうみたい。
15歳になった人は、大人として見なされるんだって。
私は乗り気じゃない。まだ子供のままでいい。
子供ならたくさん遊べるし、働かなくてもいいもんね。
「美麗! こんなとこに!」
「あっ……見つかっちゃった」今夜のお祭りが嫌で、村中逃げてたのに簡単に見つかるなんて最悪。
「さあ観念なさい!」
「やあだ、行きたくない!」
「何言ってるの、ほら歩いて」手を引っ張られながら
何回も抵抗したけど、その努力は無駄に終わり家の前に……。「本当にもう。目を離すとすぐどっかに行っちゃうんだから」「むぅ。だって嫌なんだもん」私の言い分を聞くはずもなく、お母さんは私を隣の家のおばさんに預けた。
「小さい頃は聞き分けのいい子供だったのにねえ」
「ほんとですよ、じゃあよろしくお願いしますね」
あぁ。大人の儀かぁ。面倒くさいなぁ。