狼は王子様!?
夜になるまで
まだ時間がある。
家の中なんてつまんない。外みたいに、澄んだ川はないし、小さな魚もいない。花も木も何もなくてつまんない!
「美麗ちゃん、退屈?」
「当たり前じゃん。家の中だなんて、狭いし暗いし。それに遊ぶとこもない。退屈すぎだよ」私は足をぶらぶらさせながら、おばさんの一人娘、香奈姉ちゃんに愚痴をこぼした。
香奈姉ちゃんは、23歳で、民芸品を作る人。
この村に伝わる民芸品。
特別な虫からとれる糸がある。その糸はとても長持ちで
簡単には破れない性質がある。その糸で作る洋服は、肌触りが良くて着心地も最高。
それを作る仕事に就いてるのが香奈姉ちゃん。
おばさんも同じ仕事をしてる。「美麗ちゃんって本当、おてんばよねえ。不思議だわ」
「何よお、悪いの」
「いいえ、元気ねえって褒めてあげてるんじゃない」
なんかそんな風には
聞こえない。
「そりゃ香奈姉ちゃんは、外が嫌いって言ってたもんね」
「そうよ。外ほど危ない場所はないものねえ。怖いもの知らずが羨ましいわ」
なんでみんなそう言うの?
外で遊んじゃダメなの?
元気でいることが
そんなに悪いこと?
そう思う私は、悪い子なの?
< 5 / 9 >

この作品をシェア

pagetop