狼は王子様!?
「……あら、黙り込んじゃってどうしたの?」
私は少し気分が沈んでいた。

私は小さい頃から
おてんば娘だったらしい。
お母さんが一番驚いたのが、狼が山から下りてきて、村の人を食べようとしているのに
私だけ笑顔で近付いていくという話、ある意味英雄。
そのことはあまり覚えてない。食べられずに済んだのは
奇跡としか言えないって
お母さんが言ってた。
おてんば娘を持つと、先が思いやられるとか。独り立ち出来るのかしらとか、私は心配の種らしい。
兄弟がいないから、しっかりしろって言われたけど
具体的にどうすればいいのか、知るわけがない。
美麗ちゃん、美麗ちゃんって育てられてきて、危ないからダメよとか言い続けて、最後は世間知らずのおてんば娘なんていうレッテルを貼られた。
納得行かないって思うのは
私だけなのかな……。

「美麗ちゃんは元気が一番よ」「……お姉ちゃん……」
香奈姉ちゃんは
私の前にしゃがみ込んだ。
「美麗ちゃんは確かにおてんばで、手がつけられないけど、でもあなたは村の宝物に、変わりはない」
「村の……宝物?」
私は思わず聞き返していた。
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