こころ
家に帰ってきた途端、私は進君に抱きしめられた。


「進……く……ん。ダメ。離して。嫌。」

「離さない。あなたは……わかってないんだ。勘違いしてる。」

「違う!わかってるわ!」

「俺の気持ちなんて……あなたは。」

私は彼を突き飛ばして、無理矢理離れた。
抱きしめられていたら……間違えてしまう。

「わかってるわ!あなたは、真由を愛してて、私は、真を愛してる。わかってる。」

私の言葉に、進君は口を開きかけたけれど、黙った。


「そ……だよな。勘違いしてるのは……俺だよな。」

しばらくの沈黙のあと紡がれたその言葉に、胸が痛くなった。
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