こころ
「久しぶり、心さん。」

「進、君。」

私の頭から爪先までが、彼が進君だって認識したら、涙が溢れた。



「ははっ!相変わらず泣き虫だな、心さんは。」

そういって微笑んだあなたは、やっぱり私の記憶の中のあなたと少し違う。
確かにその顔や表情には『自信』と『強さ』があった。

まだ、こんな風に思ってしまう私は愚かだろうけれど。
その『強さ』は、真が持っていた、『譲れないものを守る強さ』だってわかった。




真由と弘は私達の様子を黙って眺めていた。



「式まで、十五分だ。それまでに、話つけろよ。」

やがて弘がそういって、私の肩をポンッと叩いた。

「おいで。」

そう言って差し出された手を、私はもう二度と放したくないんだ。

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