こころ
「酷いよなぁ、心さんは。あっさり、俺の前からいなくなって。」
式場の中庭。ようやく二人きりになって進君から紡がれたのはこのセリフ。
「ごめんなさい……。」
実際は、あっさりなわけない。すごく悩んだし、苦しかった。でも、やっぱりあの時私達は離れるべきだった。
「俺さ、心理療法士、やめたんだ。」
その言葉にびっくりした。進君にとって心理療法士は天職だと思ってた。
「どうして?」
「俺にとって、譲れないものが、たった一人のこころになったから。全ての人のこころを平等にみれないやつは、心理療法士ではいけない。それに、患者に恋するなんて、ね。」