チェリーガール
目の前の棚には、色とりどりの毛糸が並んでいる。


「百均の方が安くない?」


怪訝そうな顔付きの
エプロンをかけた店員がKY発言して
気付かない、たまきの後ろを
素通りしていった。



「何色にするの?」


すだちが赤色の毛糸を手に取って見ながら、聞いてくる。


「うーん。悩んだんだけど碧様のイメージカラーって私の中ではグレーなんだよね。だから、灰色にしようかなと思ってるんだけど、どう思う?」


私、なんとなく近くにあった黄色の毛糸を手で触りながら、答えた。


「碧君だけに青だからブルーにしたら? 私ってイイこと言うでしょ? 落語家になろうかなー?」


青色の毛糸を手にした、たまきがおちゃらける。



「ハハハハハハハ。オモシロイ。ホントウ、ラクゴカニムイテル」


すだちが棒読みで喋りながら、凍りついた表情で笑う。


もちろん、目は笑ってない。


こわい……。



「学校でも予備校でも一緒だから知ってるけど、あんまりくだらないことを言うと、すだちは今みたいに壊れるんだよ。気をつけてね、たまき」


私がすだちの特性を解説。


「ふ、ふーん」


ちょっと、たまきは戸惑っている。


「じゃあ、灰色にすれば?」


たまきがそう言って、私に灰色の毛糸を取って渡してくれた。


「そうだね。そうしようかなー」


その灰色の毛糸をじっと見つめる私。


何色がいいんだろー?


全然わかんないやー。


まー、イメージに合うから灰色でいっか!


私、灰色に決めた。
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