チェリーガール
「マジ信じらんなーい! イヴの日にバイト入れるかー? 今日イヴだよ?」


たまきが不満気に語る。


その手には、細い木製の編み棒を持っている。


「これで、刺してやろうかなー? バイトじゃなくて他に女がいたら絶対刺してやる」


たまきが、編み棒を振り回す。


「こわいよ。振り回すのやめて」


さっきまで壊れてこわかった、すだちがたまきの棒を掴む。


「だってー、怪しいじゃん。なんで夜までバイトなのー?」


「夜は会えるんでしょう? よかったじゃない。今晩レストラン予約してくれたんでしょう? いいね、大人の彼氏は」


「大人なのかなー? 専門学校でデザインの勉強してる学生だよ? まー、車持ってるけどねー」


「私なんか同級生だよ。ちょっと会うだけ。お互い受験生だから家に帰ったら速攻で勉強だよ。今日は私たちにとって、ほんの少し息抜きするだけの日なのかも」


「彼氏、今何してんの?」


「今日は、家庭教師の日なんだって。だから、終わるまで待ってるの。ここで、心愛の買い物に付き合ってね」


「なーんだ。すだちも彼氏待ち? 私も、私も!!」


「何時に迎えに来るの?」


「6時半」


「もうすぐじゃない。連絡まだ? 電話したら?」


「そうだね。車でここまで迎えに来てくれるって言ってたから」




彼氏がいる2人の会話を聞いてると、鬱になった。


いいな……2人とも……。


私も碧様と会う約束したい……。


彼氏を待ってみたいよ……。




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