チェリーガール
「ほい。じゃ、これ」


たまきが『マフラー渡すぞ宣言』した私に細い木製の編み棒を渡す。


たしか……これ……たまきが……彼氏に女がいたら刺すって持ってた棒……。


「これで編んだら?」


「これ刺すって言ってたやつじゃ……」


「うん」


「さっき、振り回してたよね?」


「うん。いいんじゃない? これで」


「うーん……。そうだね……。これでいいや」
(いいの?)



その時、たまきの携帯がぶるぶる震えた。


「おー、ぶるぶる来た」


たまきが持ってた携帯でまた話をする。



短い通話を終えて、たまきは私たちに手を振った。


どうやら彼氏のもとへ行く時が来たみたい。


「今、ここの外で待ってるって」


「そう。楽しんでおいで。私は、まだまだ待たないと」


「お先にね、すだち。あっ。そうだ。言い忘れてたけど、心愛。編み方の本、買った方が良くない?」


「あっ。そうか。そうだね」


「じゃ、そういうことで。お二人さん、サイナラ!!」


彼女は、背中を向けると猛スピードで彼のところへ走って向かった。


よっぽど、嬉しいんだろうなー。


いいなー。


彼氏持ち……。



 
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