チェリーガール

で、オチは?

エントランスフロアは、広々としていて高級ホテルのそれとよく似ていた。


私たちは下に降りるため、エレベーターが来るのを待っていた。


「かわいそう」


これで何回目だろー?


もう59回か60回は呟いてるはず。


碧様は、ずっと私が貸したハンカチで涙を拭っていた。


映画が始まってすぐ、泣き出した。


終わっても、まだ泣き続けている。


そんなに大泣きしなくても……と思う。


「ち―――――っ」


私のハンカチで碧様が鼻をかんだ。


やめて……。


鼻は、かまないで……。


「ありがとう。これ洗って返すから」


碧様はそれをズボンのポケットに仕舞い込んだ。


「いいよ。それ、あげる」


「でも、悪いよ」


「ううん。返さなくていいからね」



今日は、碧様と映画館デート。


碧様に映画を誘われた。


映画のタイトルは『盲導犬物語』。


感動する話だったけど、私は泣かなかった。


たぶん、碧様が『かわいそう』って泣きながら呟くのが気になって集中できなかったんだと思う。


最初、冷たそうな人だと思ってたのに動物がすごく好きで涙もろい人だと知った。




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