one-side Love
『なつ美~、どこ行くの~?』
「2年の教室!!」
鈴に行き先を告げると駆け足で去っていった。
『やめたほうがいいよ~。』
なんて、鈴が言っていたのにまったく聞かずに。
ひとつ下の階にある2年の教室は、まだ入学二日目のあたしにはかなり居辛い雰囲気だったけど、ここで怖気づいてたらケンちゃんに会うチャンスがなくなる!!
2年の教室が全部で7クラスあるから、片っ端から教室覗いて確かめるか、勇気があったら先輩に話しかけて聞こう。
あたしは自分に気合を入れて一番近いGクラスから覗いてみた。
う、なんだこの臭い…体臭?というか男しかいない。
あたしがちょっと鼻を押さえてドアから教室を覗いていると
『なに?1年?誰かに用?』
あたしの背後から声をかけられた。
「ひゃい!…」
恥かしい。あまりの緊張に舌が…。
しかも、声かけてきたちょっと厳つい兄ちゃん、おもいっきし人の顔指差して笑ってるし。
ここまで笑われると緊張なんかどっかにふとんじゃったかわりにちょっと不機嫌だよ。
「あの、高槻健二先輩ってどこのクラスか知ってますか?」
声かけてくれたのがチャンス!ここで聞ける!
『あ~高槻ね。あいつ新入生でもモテモテだね。』
「知ってるんですね!どこのクラスですか?」
もうすぐ会えると思うと期待と不安が
『ほら、あそこの一番後ろで寝てるやつ。』
窓側の一番後ろの席で机に伏せて寝ていた。
あたし、すごくドキドキしてる。ケンちゃんあたしのこと覚えててくれてる・・よね?
でも、もうあたしの思考は暖かい窓際で寝ているケンちゃんでいっぱい。
ドキドキしてるんだけど、あたしが求めていた人がすぐそこにいる。
教えてくれた厳つい先輩にお礼を言うことも忘れ、あたしは無意識に寝ているケンちゃんに一歩一歩近づいていった。
この厳つい先輩がなんか言ってたけど完全あたしの耳には入っていなかった。