粉雪の舞う夜
でも、やっぱり。


「怖くない、んですよねぇ……。
変な話ですけど、私何故か貴方が気になって仕方ないんです」



どれだけ考えても彼が、いわゆる“幽霊”なんだとしても、私は怖いとは思わなかった。


それよりも、彼を知りたいと思う私がいる。


「そっか、良かった…」


彼はさっきまでの不安そうな顔じゃなく、安堵したのか、フワリとした柔らかい笑みで私を見つめてくる。


ドクン。


ドクン。


やっぱり、私は可笑しい………。


彼の笑顔を見ただけで、こんなにも胸がざわめく。


ただ笑っているだけなのに、その笑顔を凄く愛しく感じる。


私は徐々に早くなる鼓動を聞きながら、彼に尋ねる。


「貴方は、誰なんですか?どうして、私にだけ見えるんですか?」


どうしても知りたい。


貴方の事を………。



「……名前は、正典。
あと、何故君にだけ見えるのかは、それは…俺が君に逢いたいと思ったから」


彼は、戸惑いながらも教えてくれた。


正典。
と、聞いてもやはり私は知らない。


当たり前なんだけど、正典さんとは、初めて逢った気がしなかったから。



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