粉雪の舞う夜
でも、よくよく考えたら生きていない人なんて、私の知り合いでいるはずないよね……。


でも、正典さんは言った。


「…私に、逢いに?」


確かに、そう言ったよね?聞き間違いではないはず。


その証拠に彼は、コクンと頷いて私の冷え切った手を握り締めてきた。


あっ、幽霊でも触れるんだぁ。
なんて、呑気に繋がれた手を見つめる。




「ずっと、逢いたかったんだ。
……でもね、俺はこの世の者じゃないから君に、逢うことは許されなかった」


握られた手が、微かに震えてる。


「でもね、約束したから」

「……約束?」


「そう、約束したんだ。
君と……正確には、前の君と。
必ず、逢いに行くからって」


彼は今にも泣きそうなくらい顔を歪めて、必死に涙が流れないように耐えているようだった。



「……前の私ですか?」


それって、どうゆうこと?


前の私って?


私が、困っているのを表情で読み取ったのか、彼は言葉を続けた。

< 26 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop