粉雪の舞う夜
「君は、きっと覚えてないよ。それが、当たり前だからね……。でもね、俺は確かに前の君、前世の君と約束したんだよ」

前世の私?
それって、つまり……


「……早紀……」


「……え?……」


私が結論を頭でまとめている時、ふいに名前を呼ばれた。


驚いて私は、彼を見つめた。


「私の、名前。
……まだ、言ってませんよね?」

彼の名前を聞いていたけどタイミングが合わなくて、私はまだ名乗ってない。


なのに、なんで?


「何で知ってるのか、って顔してるね?」


「その通りです」


だって、可笑しいじゃん?
名乗ってもないのに、何で知ってんの?って話じゃん。


私が心の中で会話していると、それも表情に出ていたのか彼が、クスッと大きな瞳を細めて笑った。


なんで、笑うのよ!


「ごめんね。あっ、君の名前は知らなかったんだけどね。
俺が、知ってるのは前世の君の名前。
……でも、まさか生まれ変わっても“早紀”だとは思わなかったよ」


「あの、それって……。
どういう事か、いまいちよく……」


前世の私とか、生まれ変わりとか、そんな事ありえない。


あっ、でも今目の前にいる正典さんも普通ありえないし。
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