粉雪の舞う夜
ありえない事だけど、でも正典さんが嘘を言ってるようにも見えない。


それに、やっぱり初めて逢った気がしないのは、彼の言う通り前世で逢った事があるからかもしれない。


正典さんを信用していいのかもわからないけど…。

でも、私は正典さんが嫌いではないから………。


「ねぇ、早紀ちゃん。
奇跡って信じる?」


私の手を握りしめたまま正典さんは、呟くように聞いてくる。


“奇跡”


「あのね、奇跡ってあるんだよ。
信じていれば、奇跡は起こるんだ。
だから、俺はずっと信じてた……。
もう一度、早紀ちゃんに逢いたかったから」


その時、私はまたお婆ちゃんの言葉を思い出していた。


聖なる夜には奇跡が起こる、か……。


でも、確かもう一つお婆ちゃんは私に教えてくれた気がする。


なんだっけ?


「早紀ちゃん、俺のお願い聞いてくれる?」


「お願い、ですか?」


「……うん」


私は、悩んだ。
聞いていいものなのか。

暫く考えても答えは出ないから、私は聞いてあげることにした。


どうせ、もう逢うこともないだろうから。


一緒にいる今を大切にしたいと思った。


「なんですか?」

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