粉雪の舞う夜
もう、雪は完全に止んだ。


彼を見ると、雲の割れ目からうっすらと覗く月の明かりで、透けているように見える。



私は、彼から一歩距離を置いて彼を見つめた。


「……いいよ、約束しよう?」


彼も、私から一歩距離を取り私を見つめる。


「また、必ず君に会いにいくから……」


「うん」


「その時は、こんな俺じゃなく、人間として…」


「うん」


一歩、また一歩と離れていく二人の距離。


「今度は、今度は……。
別れのないように、ずっと早紀の隣にいたいなぁ……」


「……うん」


「だから、それまで……俺の事、忘れないって、約束して?」


優しく微笑む彼の顔が、次第に揺らいでいく…。


あぁ、なんだ笑ってるつもりだったのに、泣いてるんだ私……。


「忘れ…ないよ。
…ずっと、待ってる」


『約束』


二人だけの、二回目の約束を交わした。


一回目の約束は、記憶にはないけど、また同じように約束をした。


「それじゃ、早く帰りなよ」


「……うん」


私は、頷くとゆっくりと彼に背を向けて歩き出した。


少しづつひらく彼との距離。


お別れの時間。


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