Circle of Happiness ~幸せの輪~
病院から帰ってきたあいつと、俺は2人で話をするつもりだったんだ。

親や、友だちの前ではがんばらなきゃいけないかもしれない。

だけど、俺も前では頑張らなくていいんだって、言ってやるつもりだったんだ。

泣いていい、怒っていい、頑張ろうと思わなくてもいい、疲れたって言っていい、好きなことしていいって、言ってやるつもりだったんだ。

だけど、病院から帰ってきたあいつの表情にはどこか安堵感が浮かんでいて、

なんとなく察した。

長くないって、宣告されたんだろう。

死に対して、恐怖を持っているはずだ。

だけど、それに勝る『安堵感』。

あいつは、もう頑張らなくても良くなることに、どこかで安心していたんだ。

父さんが帰ってきて飯の後、告げられたあいつのタイムリミットは『半年』。

ほっとしたような笑顔を浮かべながら話すあいつに苛立って、思わずキレた。

最近のあいつの表情は見ている俺の心が痛むようなものばかりだったのに、

あの時浮かべ表情は、心からの笑顔で、

表情から『やっと解放される』って伝わってきて。

こんなにも祈が追い詰められていて、

こんなにも解放されたくて、

そのことに俺は、気がついていたのに助けてやれなかったんだって、

後悔ばかりが浮かんできた。

学校の準備をするって、そう言って部屋に戻ったお前は、

あの時のように泣いたりはしないんだろう。

俺の大っきらいな人間である、有希に、自分のリミットをつげて、

何もなかったかのように、普通にもどるんだ。

そんなのってねぇよ。

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