月光る夜に
このとき俺は、初めてちゃんと女の姿を見た。
サファイアブルーの目をした美しい顔立ちの女で、腰ほどまである長い黒髪は全く痛んでいない。
しゃんと背を伸ばして座る姿は、何か女神のようなものを連想させた。
この美貌、この堂々とした態度……
そして、城の中心からかなり離れたところに部屋を持っていること……
もしかするとこの女が噂の第二王女なのかもしれない。
「今夜城の者が騒がしかったのは、あなたのせいのようですね」
目の前の女が言った言葉に、仮面の下で思わず顔をしかめてしまった。
特に意味もなく言った言葉のようだが、失態を起こして騒ぎにしてしまった身としては少し耳に痛い。