月光る夜に
俺は、目に見えては曖昧に首をかしげるだけにしておいた。
とりあえず話題を変えるためと、相手の正体を知るためにひとつ質問をした。
「あなたは高貴な方と見受けたが、名を訪ねても?」
女は少し間を開けたあと、無意識にか少し声のトーンを落として言った。
「リーチェと申します」
「リーチェ?第二王女の?」
リーチェは答えるように軽く微笑んだ。
その姿がはかなく咲く花のようだと、柄にもなく思ってしまう。
しかし、やはりと言うべきか、この女が例の第二王女なのか……。
俺は憐れみの気持ちを仮面の下に隠した。