月光る夜に
今ならここから飛び降りれば、捕まることなく城から抜け出せる。
「……また来てくださいますか?」
小さく囁くような声が聞こえた。
驚いて振り返ると、はっとしたように彼女が慌てて言った。
「すいません、何でもな……」
思わず笑みがこぼれた。
今の言葉がもし本当なら……
とても胸が温かくなった。
「ああ、もちろん。ちゃんとした礼もしなければならないしな」
パッと身を翻し、俺はそのまま窓の外へと飛び降りた。
今夜は失敗も多かったが……
こんな気持ちになったのはいつ振りだろうか?
またあの姫に、もう一度会いたいと思った。