月光る夜に
仮面で顔付きはわからないけれど、口角が軽く上がっているのは見えた。
「ちょっとしたことだが、リーチェ姫へのお礼になるようなものを見つけてきた」
「そんな……、お気持ちだけで充分ですのに」
「気持ちだけなんて俺の気が済まない」
ルシアン様は私の後ろで控えているアンナに視線を移した。
「姫の外出許可がいただきたいのだが」
アンナは真っ直ぐルシアン様の目を見つめた。
「リーチェ様に危害が及ばないと約束できますか?」
「ああ、もちろん」
何のためらいもなくそう言う。
アンナはしばらく考え込むそぶりを見せると、仕方ないといった様子でうなずいた。
「では、許可を出します。ただし夜が明けると護衛の兵士が部屋に来ますので、それまでにお戻りになることが条件です」
ルシアン様の口元が少し緩んだ。
「心配要らない。危険なことはないと誓うし、夜明けまでには必ず帰す」