月光る夜に
「今夜城の者が騒がしかったのは、あなたのせいのようですね」
男は軽く首をかしげただけで、私の質問に答える気はないようだ。
「あなたは高貴な方と見受けたが、名を訪ねても?」
正直に答えていいのかしら……
いや、多分この男は私が王女だと薄々気づいているようだし、知られたところで困ることなど何もないから構わないわ。
「リーチェと申します」
「リーチェ?第二王女の?」
私は答える代わりに軽く微笑んだ。
「あなたは?」
「ルシアンだ」
ルシアン様……ね。
そこでアンナが口を挟んだ。
「終わりました」
ルシアン様は治療を施されたところをちらりと見ると、さっと立ち上がった。