月光る夜に
「本当に助かった。礼を言う」
軽く頭を下げて、ルシアン様は窓辺へ歩み寄った。
「……また来てくださいますか?」
って、何を言ってるの、私ったら!!
「すいません、何でもな……」
「ああ、もちろん。ちゃんとしたお礼もしなければならないしな」
フ……とルシアン様が微笑む。
そのまま踵を返し、窓から一気に外に飛び出した。
なんで私、あんなことを言ってしまったんだろう……
どうしてルシアン様にまた来てほしいだなんて思ったんだろう……
「リーチェ様」
アンナの声に振り向くと、おずおずといった様子で尋ねてきた。
「……よろしいのですか?護衛におっしゃらなくても」
「ええ。ルシアン様の目は悪い人間のそれではなかったもの」
城に侵入したことが悪いことだと言われればそれまでだけれどね。