゙幼なじみ゙という名の壁~素直になれなくて~






午後17時半。

まだこの家には誰もいない…。


月穂の父さんは単身赴任中だからあまり帰ってこない。


そして珠理さんは看護師をしているため帰りも遅い。


綴未は総体前だし部活だろう。



律哉もまだ保育園かな…。




…あれから月穂が眠った後
氷枕を用意して冷えピタを
額に貼った。


そして今は…
何もすることがなく
かなり暇だったので
数学の宿題をしている。


ふと、背後で寝息をたてている月穂が気になった。



もう一度ゆっくり額に手をあてると
やっぱり熱い………。



…あ………そういえば
熱計ってなかったな。



結構汗もかいてるし
着替えたほうがいいかもな。



気持ちよさそうに
眠っている月穂には悪いが
一旦起こしたほうがいいな…。





「月穂???」


「――――――ん?」


月穂がゆっくりと目を開けた。

「ゴメンな、起こして…。
…熱計ってなかっただろ?」


「あ、本当だ……。」


「それにすごい汗だし
着替えたほうがいいだろ。
…体温計どこ?
俺が取ってくるから。」



月穂は申し訳なさそうな表情だが、こんな時くらい
少しは頼ってほしい。


「迷惑かけてゴメンね…?
リビングの赤い箱の中にある……。」




「迷惑だなんて思ったら
お前の看病なんか
やってねぇっつ―の!!!
…体温計取ってくるから
ちょっと待ってろ。」





少し強引に言うと
月穂は小さく頷き
もう一度布団に入った。


ったく・・・
俺に気使うなよ・・・





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