太陽は月を見れない

朝日が昇り、明るくなった空を見上げる。

雲一つない、青空。


公園の時計の針がカチリと動いた。

「7時半…!」


わたしは急いで家へ引き返す。



ガチャ!

家の中へ飛び込み、すぐさま鍵をかけた。


「………はぁっ…はぁ……」


玄関の扉にもたれ掛かり、地べたに座る。

日頃の運動不足も祟って、朝から猛ダッシュはさすがにキツイ。
でもおかげで間に合った…。


「………………来た…っ。」


誰もいないこの家だから、外界の音がよく聞こえる。


「今日漢字テストあるじゃんー。」

「げっマジ!?アタシ勉強してないし!」

「別にいいっしょ?どーせ勉強する気ないくせに!」

「ひっどーい!」

「アハハ!」


外界の音が耳障りで仕方ない。
わたしはギュッと瞳を閉じ、両手で耳をふさいだ。

「いやぁっ聞きたくない……聞きたくない!」

次第に音は遠ざかってゆく。


けれど、わたしの耳にこびりついて、いつまで経っても頭の中をこだまする。


「う…う…っうぁぁぁ…ん!」


いつも通りの穏やかな朝だ。

なのに心はちっとも穏やかじゃない。
泣き声は部屋の隅々まで虚しく響き渡った。





< 2 / 17 >

この作品をシェア

pagetop