太陽は月を見れない
朝日が昇り、明るくなった空を見上げる。
雲一つない、青空。
公園の時計の針がカチリと動いた。
「7時半…!」
わたしは急いで家へ引き返す。
ガチャ!
家の中へ飛び込み、すぐさま鍵をかけた。
「………はぁっ…はぁ……」
玄関の扉にもたれ掛かり、地べたに座る。
日頃の運動不足も祟って、朝から猛ダッシュはさすがにキツイ。
でもおかげで間に合った…。
「………………来た…っ。」
誰もいないこの家だから、外界の音がよく聞こえる。
「今日漢字テストあるじゃんー。」
「げっマジ!?アタシ勉強してないし!」
「別にいいっしょ?どーせ勉強する気ないくせに!」
「ひっどーい!」
「アハハ!」
外界の音が耳障りで仕方ない。
わたしはギュッと瞳を閉じ、両手で耳をふさいだ。
「いやぁっ聞きたくない……聞きたくない!」
次第に音は遠ざかってゆく。
けれど、わたしの耳にこびりついて、いつまで経っても頭の中をこだまする。
「う…う…っうぁぁぁ…ん!」
いつも通りの穏やかな朝だ。
なのに心はちっとも穏やかじゃない。
泣き声は部屋の隅々まで虚しく響き渡った。