太陽は月を見れない

それでも彼女はわたしの名を呼び続ける。

「歌南、あたしの話を聞いて…!」


今は朝の6時。
まだ静かな街に、麻衣の声は一際響く。

「歌南!歌南…!」


「あーもう朝っぱらからうるせーな!静かにしろよ!」

その声を遮るような、男の怒声。
麻衣は不意の大声に驚いて振り返ると、窓から男が顔を覗かせていた。

「す…すみません。」

ペコリと頭を下げると、男は麻衣をキッと睨み付けて、

「ったく…こっちは今寝たばっかりなんだよ…。」

と、ぴしゃりと窓を閉めた。


「また来るわ…歌南。」


麻衣はふぅ、と小さなため息をついて、立ち去っていった。











< 9 / 17 >

この作品をシェア

pagetop