太陽は月を見れない
それでも彼女はわたしの名を呼び続ける。
「歌南、あたしの話を聞いて…!」
今は朝の6時。
まだ静かな街に、麻衣の声は一際響く。
「歌南!歌南…!」
「あーもう朝っぱらからうるせーな!静かにしろよ!」
その声を遮るような、男の怒声。
麻衣は不意の大声に驚いて振り返ると、窓から男が顔を覗かせていた。
「す…すみません。」
ペコリと頭を下げると、男は麻衣をキッと睨み付けて、
「ったく…こっちは今寝たばっかりなんだよ…。」
と、ぴしゃりと窓を閉めた。
「また来るわ…歌南。」
麻衣はふぅ、と小さなため息をついて、立ち去っていった。